2009年6月9日火曜日

リタイアの痛さ

 その1年前、一足先にパリダカに初参戦し、リタイヤの屈辱を味わっていた友川の「とにかく全てが凄い」という言葉と、「世界で最も過酷なレース」という謳い文句通りに、私の初戦は3日目にして苦戦を強いられ、そして、7日目の真夜中、サハラの砂漠に飲み込まれてしまった。
   

 

 カミヨンバレーを待っている間、ひんやりとしたサハラの砂をすくい、サラサラと手のひらからこぼれおちていく様を何時間も味わっていた。 あの感触は今でも手のひらに残っている。あの日、砂から教えてもらったことはとても多かったのだ・・・・。 ドライビング技術やナビゲーション技術は勿論だが、もっと泥臭いこと、例えば、日常ではないところだからこそ垣間見える自分や相手の本質。それを知ることの怖さに打ち勝つこと。お互いを信じ、思いやる心の強さ。感情のコントロールの難しさ、などなど・・・・だ。大人なんだからって思うかもしれないけれど、大人だから難しいということもある。    



 マシーントラブル発生から4時間後、ようやくカミヨンバレーが砂丘の奥から現れた。

私は小さいので、荷台ではなく運転席に座らされたのだが、フランス人ドライバーとナビゲーターの間に挟まれながら、ずいぶん長いこと彼らの怒鳴り合いを聞かされていた。しまいにはナビがルートブックを放り出し、隣で大いびきをかきだす。

「おい、次の指示をしてくれ」
いつの間にかナビをやらされていた・・・。眠いのに・・・・。
結局、次の日の昼ごろまかかってモーリタニアの砂丘に残されていた競技者達を数人救い出し、やっとの思いでビバークに到着。  

「来年もまた会おうな!俺達いいコンビだったと思わないか?」
というドライバーの問いに、
「残念だけど・・・・来年は完走するつもりだから、コース上であなたに会うことはないと思うわ!」
と即答。うん、絶対に完走しなければ!と心で叫んだ。






 *カミヨンバレー・・・・リタイヤした競技者を救出するトラック

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