2009年7月3日金曜日

1月18日 レグ14

キファ~サンルイ 750km(SS166km)

 SSスタート地まで450kmという気の遠くなりそうな長いリエゾンンのため、今日も早朝、暗いうちからのスタートとなった。とにかく道が悪い。舗装路のあちこちが崩れているし、思ったようにスピードが出せない。最後の最後まで気を抜くなってことだろう・・・・。

 反対に、SSは166kmというショートでハイスピードなコースだった。うねうねと曲がりくねっていて、一瞬の気の緩みも許されない感じだ。タイヤのグリップがいまいちしっくりこなかったので、途中で空気圧を少し下げて走った。走ってみると、あっけなく終わった感じがしなくもない・・・・。
 
 SSを走りきり、短いリエゾンの間に見えた町並み・・・・。
砂色だけの無の世界が、色鮮やかな世界に変わっていた・・・。

どこかで見た絵の中のようだ。

なんだっけ?

・・・・あぁ!沢田としきさんが描くアフリカだ!

生ある喜びを空と大地に感謝し、太鼓に合わせて踊る人々を描いた絵だ!
すごい!絵の世界と目の前に広がる景色がシンクロしている。出発前には気がつかなかったけど、ここには生のエネルギーが充満している。

 サンルイに着くと、監督やメカニック達が暖かく迎えてくれた。いつものようにワインやパスティスを手渡してくれる・・・・。いつもより多めにワインやチーズなどのおつまみがテーブルに乗っている。
かすかにパーティーの雰囲気・・・・。
・・・・そうだよな。今夜が最後のビバークだ。皆、思い残すことのないよう楽しんでいるんだろうな・・・。

「アケミ、それ、早く飲め!」
一瞬、怒られたのかと勘違いするくらい大きな監督の声・・・。
「シャワーだ。明日ポジウムに上るのに、そんなに汚いままじゃ、スポンサーも喜ばないぞ!」
明日が最終日だなんて、まだ実感がないので、そう言われてもピンとこない。そうだよなぁとは思うけど・・・・・。友川もあんまり行きたそうでもなかった。反応の鈍さがおもしろくなかったのか監督が付け加えた。
「熱いシャワーだぞ!」
「行く!」

「熱い」に反応した感じだったが、パスティスの残りを一気に飲みほし、私と友川はトラックの荷台に乗り込んだ。ぬるい風にあたりながらサンルイの町を少し走る。
ちょうど太陽が沈む時だった。
町も、そこを歩く人々も、トラックも、私たち自身もオレンジ色に照らされていた。
何もかもがあまりにも綺麗で泣けた・・・・。

  チームが借りているホテルのお部屋でシャワーを浴びると、これまでの疲労がどっと押し寄せてきたようだ。さっぱりとこぎれいになった私たちは、目の前のベッドにもぐりこみたい衝動を抑え、ホテルのラウンジに降りていった。とりあえず今のこの時間を楽しみたい。
・・・・・そう思っているのは私達だけではなかったようだ。ラウンジは多くの競技者やその関係者でワイワイしている。

 友川は明日のゴールのことは一言も話をしない。ちょっとは浮かれてもいいのに、普段と変わらない・・・・。いつものように冗談ばかり言って周りの人を笑わせている。
 友川のそういうところって、本当にすごいと思う。スタート前に緊張していたのは知っているけど、今夜はありがたいくらい普通だ。そういう私もなんだか疲れすぎていて思考が止まっているのか、フワフワしたままだ。明日がゴールだなんて・・・やっぱり実感がわかない。

 小一時間をそこで過ごした後、ビバーク地に戻った。そして、いつもと同じようにワインを飲みながら夜空を眺め、いつもと同じようにテントの中にもぐりこんだ。乾いた太鼓の音がいつまでもなり続けている・・・・。目が覚めたらいよいよダカールか・・・・。
長年見続けてきた夢が現実となる・・・・はず。

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