2009年6月18日木曜日

1月11日 レグ8



タウア~アガデス 828km(SS575Km)

 全体的にフラットなハイスピードコースだったが、ところどころに砂丘が現れ、パリダカらしい景色の中での戦いだった。砂丘越えのテクニックを磨くにはちょうど良い感じだった。
 砂丘の向こうがどうなっているかは越えてみないとわからない。砂丘のトップで止まるわけにはいかないので超えた瞬間にどう進むかを判断しないとならない。友川と私が選んだライン取りが同じでないともたついてしまう。ラインの楽なほうに進んだとしても進むべきカップを無視できないので、砂丘越えは奥深い。

 砂丘越えのリズムをつかんだ友川は、練習だからと言って1メートルにも満たない小さな砂山の方にタイヤを向けた。
・・・悪い予感。
そして、的中・・・。

 埋まったタイヤを掘り、デフに引っ掛かった砂を取り除いてスタックボードを使えば簡単に出れそうな場所だったが、意外に砂が柔らかく、タイヤは無情にも砂をかくだけだった。数十センチ動いただけで再び同じように埋まっていく。 さっきより深くうもれたかも・・・と思いつつまた砂を掘っていると、レンジローバーで参戦しているプライベートチームが止まってくれた。
「ごめんよ。困っている仲間達を助けながら順位に関係なく走るのが俺のパリダカ哲学なんだが、俺のマシーンじゃ助けられそうにない。悪いけど先に行く」
 彼の言葉が心に響く。パリダカを愛し、純粋に楽しみ、そして、砂漠を知った者の言葉の音だと思った。かっこいい。

 レンジローバーのエンジン音が消えぬうちにカミヨンが引っ張りだしてくれた。感謝。

 その後は快調に進んだのだが・・・・。

CP3を過ぎ、ルートブックではカップ50~60に向いて走るよう指示されていた。今走っている方向はカップ10~20だ。友川にもっと右の方向に進むように指示したが、
「あっちは轍が少ないし目の前に走りやすい轍があるのだからそれを追えばいい。いつか合流するでしょ」
と、返事が返ってきた。一瞬、ムカッとしたが、確かに右のルートよりこのルートのほうが轍もはっきりついている。次のコマ図までの区間距離は5Km程だったし、路面は全くのフラットだったので後からカップを合わせれば問題はないだろうと判断。友川の言うままに走らせた。

 しかし、5km走ってもカップは50にも60にも向かなかった。
「やっぱり引き返そう」
「・・・・・・」
「これ、きっと迂回コースだよ。戻るか、それが嫌なら今から右に向いて走って」
「・・・・・OK。信じる」

 戻る途中、カミヨン2台とすれ違がった。
友川は何か言いたそうだったが気にはせず、オンルートを見つけることに専念。

 はるか向こうに、カップ50方向に向いてオンルートと思われるルートを走っているカミヨンを発見した。
「あっちだ!あっちに向かって走って!轍なんかいいから!」
「これでパンクしたらあんたのせいだからね!」
「わかったから!あっち!」

 轍のまったくない路面を走る不安と快感を同時に味わう。それは友川も同じだったようだ。

 オンルートに復帰し、本当に何もない平原を地平線目がけて時速140キロ以上で走り続けた。

まこねぇ、かっこいい!さっきのことはなかったことにしてあげよう!

 太陽が西に傾き出し、コントロールに近づくにつれ路面の様子が変わてきた・・・。 ガレ場に吹き溜まりの砂。スピードが出せなくなってきた。

 コントロールまであと10kmというところに壁のように立ちはだかる大きな砂丘が現れた。
コマ図によると砂丘と砂丘の間に岩場がある。トリプルコーションだ!!!
 
 友川はひるむことなく果敢にアタック。
一瞬いけるかと思われたが、2つ目の砂丘のトップで止まってしまった。
 
 再度アタックするためにマシーンを後退させ、私は空気圧を落とすためにマシーンを下りた。
空気圧を1.1まで容赦なく落とし、そのまま砂丘のトップまで歩いて登り、友川のアタックしやすそうな轍の浅いところを選び、そのラインの上に立った。自分を目がけて走るように指示をすると、助走距離をぎりぎり確保した友川が壁のような砂丘にアタック。・・・・その一部始終をドキドキしながら見守る。

 2度目のアタックで見事成功!美しい!
思わず歓声を上げた!

 オーガナイザーの仕掛けたトラップをクリアーすると、脳内にエンドルフィンが充満するのか、疲れなんか一気に吹き飛んだ。ドライバーにとってもナビにとっても最高に嬉しい瞬間だ!心の底から「イェーイ!」
 
無事にコントロールを抜けるとすぐにアルリットという町に入った。ニジェールの北側に位置するこの町には、今回の民族紛争の源であり、「青い種族」と呼ばれる誇り高き砂漠の戦士「トアレグ族」が多く住んでいるそうだ。当初、この町もキャンプ地になっていたのだが、危険を回避するためにこの町は通過するだけになった。しばらく行くとガソリンスタンドがあった。数台が給油していたので私たちも休憩がてら給油することにした。すぐに物売りが寄ってくる。手持ちがないので何も買えないと断ったが、なかなか立ち去ろうとはしなかった。


「おまえはシノワ(中国人)か?」
「ジャポネーズ(日本人)だよ」
「それはどこにある?遠いのか?」
「遠いよ。たくさんの海と山を越える」
「俺はトアレグだ」

青い民族衣装を着ていないので胡散臭かったけど、
“戦士”というフランス語がわからないので、

「素晴らしい」

と言うと、彼はニッコリ笑い、

「記念にこれをやる」

と言って、銃の弾で作った首飾りを手渡してくれた。

「これはトアレグのお守りだ。神がお前を助ける」



 埃だらけの物売りの砂漠の戦士にお礼を言い、そこから240km南下。アガデスの町に入った。

アガデスはニジェールの中央部の代表的なオアシスとして16世紀中頃から栄えた町。

1991年(第13回)まではパリダカの勝敗を握る重要なキャンプ地として知られている。



・・・・いよいよ明日は、そんな歴史のある町での休息日だ!

 ここまで無事に来れたことを砂漠の神に感謝した!

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